途法とほう)” の例文
途法とほうにくれた蘿月はお豊の帰って来るまで、否応いやおうなく留守番にとうちの中に取り残されてしまった。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
長庵になってみれば、油御用の株が伊豆伍から奪われて筆幸へ廻れば、筆幸から途法とほうもない謝礼が転がり込む約束になっているから、元より万事、慾と二人づれでなければ一寸も動かぬ長庵である。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
お豊は途法とほうに暮れた結果、兄の蘿月らげつに相談して見るよりほかに仕様がないと思ったのである。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「そうとも! それにきまってらアな、南のお奉行様が、いざ手におくだしになるまでにゃアすっかりお調べがとどいているんだ。その御眼力にはずれはねえ。しかもお前、そのめしもりの女ッてエのが、また途法とほうもねえ阿婆摺あばずれだってえじゃアねえか」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
途法とほうにくれてあたりを見る時、吹雪の中にぼんやり蕎麦屋そばやの灯が見えた嬉しさ。
雪の日 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
殆ど途法とほうに暮れてしまった。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)