透明すきとお)” の例文
それは、色のない透明すきとおったものが光っているようでいて、そのくせどうも形体かたち明瞭はっきりとしていない、まるで気体のようなものでした。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
見ても、薄桃色に、また青く透明すきとおる、冷い、甘い露の垂りそうな瓜に対して、ものほしげに思われるのを恥じたのであろう。茶店にやや遠い人待石に——
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むろんさけもございました……にごってはりませぬが、しかしそう透明すきとおったものでもなかったようにおぼえてります。
編笠をもれたあごの色が、透明すきとおるようにあお白く、時々見える唇の色が、べにをしたように紅いのが気味悪いまでに美しく、野苺に捲きついた青大将だと、こう形容をしたところで
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これは眼の処へ透明すきとおったドロドロのようなものが附着くっついていてそれが黄身の白いひもと連結してあります。エ、分りませんか。どんな玉子でもこの通りに黄身の両端から白い筋が出ていましょう。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)