追懸おっかけ)” の例文
ありゃね、しょッちゅう、あの花売を追懸おっかけ廻していたんで、今朝も、おめえ、後をけて石滝へ入ったんだと。え何、力になろうの、助けてやろうという贅沢ぜいたくなんじゃあねえんでさ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
傘の色が、又代助の頭に飛び込んで、くるくると渦を捲いた。四つ角に、大きい真赤な風船玉を売ってるものがあった。電車が急に角を曲るとき、風船玉は追懸おっかけて来て、代助の頭に飛び付いた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鶴とは申せど、尻を振って泥鰌どじょう追懸おっかける容体などは、余り喝采やんやとは参らぬ図だ。誰も誰も、くらうためには、品も威も下げると思え。さまでにして、手に入れる餌食だ。つつくとなれば会釈はない。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これだけに負けて置けと命令するようにいって、もし主人がその通りにしないと、友達は健三を店先に残したまま、さっさと先へ歩いて行った。健三も仕方なしに後を追懸おっかけなければならなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)