輸贏ゆえい)” の例文
すなわちちょうはんというのは「ばくち」の一種で、丁よ、半よと、輸贏ゆえいを争うことのいなのであります。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうして、左枝の顔に、それまでにはなかったところの、悽愴な気魄がうかび上がった。輸贏ゆえいをこの一挙に決しようとするのであろうか、突然立ち上がると同時に廊下へ飛び出した。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
米国の費府大学で状師じょうしの免状をとり、まだ若冠だが出来がよく、訴庭で法官と輸贏ゆえいを争ってもヒケをとるような男ではないが、因循する性質で、大切な時を尻込して失敗しくじってばかりいる。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
二つの骰子さいころを壺笊に入れ、女が白い手で、ぱっと伏せる。骰子はカラカラッと鳴って、静まる。狐、狸、猿、狼、虎——瞬間の輸贏ゆえいに賭ける、いろいろなまなざしを、客たちは女の手元に集中する。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
生命を端的の輸贏ゆえいにかけて、恩怨を決死の格闘に置くの約束が果されようとしているのだ。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)