躰臭たいしゅう)” の例文
窓もふすまも閉めきったままで、病人の躰臭たいしゅうがこもっているため、必要以上に香をいているらしく、座敷いっぱいがむせるほど匂っていた。
すると、あまっぱいような女の躰臭たいしゅうと、白粉おしろいにおいとが入り混った、なまあたたかい空気が彼を包み、彼は頭がくらくらするように思った。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
りつ子は牛の匂いが臭いと云った、藁のあまやかな香りよりも、そばへ来たりつ子の躰臭たいしゅうのほうが、彼には強く感じられた。
おごそかな渇き (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
幾たびかしがみついてきたおりうの、熱いような躯のほてりや、ときとすると強く匂った躰臭たいしゅうが、現実のように思いだされたのだ。安宅の眉間みけんしわがよった。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
湯気に熱した若い躰臭たいしゅうや、香油の匂いが、風呂舎いっぱいにこもるようで、半之助は少なからず閉口した。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
男には男の躰臭たいしゅうがあり、女には女のそれがある。おれには妻のからだの匂いは、好ましく刺戟しげき的であった、と銕太郎は思った。妻のからだの触感は、いまなお彼の手や肌になまなましく生きている。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)