蹣跚よろよろ)” の例文
菊池がそれを憤慨して、入社した三日目に突然、社長の頬片ほつぺたを擲る。社長は蹣跚よろよろと行つて椅子に倒れ懸りながら、「何をするツ」と云ふ。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
私は柄杓ひしゃくで水を浴せ掛ると、鶩は噂好うわさずきなお婆さんぶって、泥の中を蹣跚よろよろしながら鳴いて逃げて行きました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それを見た大観は急にべ酔つたやうな顔をし出した。蹣跚よろよろと立ち上つて
前の方の四五人は、甲高い富江の笑声を囲んで一団ひとかたまりになつた。町帰りの酔漢よひどれが、何やら呟き乍ら蹣跚よろよろとした歩調あしどりで行き過ぎた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
とぼけ顔に言よどんで、見れば手に提げた菎蒻こんにゃくを庭のすみへ置きながら蹣跚よろよろと其処へ倒れそうになりました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一体私は、此叔父の蹣跚よろよろした千鳥足と、少しでも慌てたさまを見た事がなかつた。も一つ、幾何いくら酔つた時でも、唄を歌ふのを聞いた事がない。叔父は声が悪かつた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)