起伏おきふ)” の例文
恋に生きた昔は知らず、得意な女と、失意の女とが、おなじ起伏おきふしのころのように、一人は踊り、一人は地を弾いて相向っている——
大橋須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
十二時に近き頃より波の起伏おきふしのせはしくおどろしくなり申しさふらひしか、食事に参るとて安達夫人私の手をとりて甲板かふばんをおおろし下されさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
涯もない曠野、海に起伏おきふす波に似て、見ゆる限りの青草の中に、幅二尺許りの、唯一條ひとすぢの細道が眞直に走つてゐる。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そもそもこの「火の玉」少尉とよばれる六条壮介そうすけと戸川中尉とは、同期生だったのだ。そしてかつては、ソ満国境を前方ににらみながら、前進飛行基地のバラックに、頭と頭とを並べて起伏おきふした仲だった。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かたわらに大橋図書館をひかえた宏荘の建物の中に住い、令嬢豊子さんは子爵金子氏令嗣れいしの新夫人となっている。よろずに思いたらぬことのない起伏おきふしであろう。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)