赭茶あかちゃ)” の例文
船のへさきに赭茶あかちゃけた土と、緑の樹木と、無線電信の高柱と、山鼻の大岸とをもったジブラルタルが海の夢のようにぽっかりと浮かび上った。
ほうきのような赭茶あかちゃけた毛を、大髻おおたぶさにとりあげ、右眼はうつろにくぼみ、残りの左の眼は、ほそく皮肉に笑っている。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
跡には赭茶あかちゃけた山の地肌が醜く曝け出され、岩石と切木株がゴツゴツと露はれてとげとげしい感じを与へた。
夏蚕時 (新字旧仮名) / 金田千鶴(著)
帆村の目にうつったのは、赭茶あかちゃけた毛と白髪とが交っている、中老人らしい後頭部を見ただけでありました。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かの女の小児型の足が二つまりのようにずんだ。よく見ればそれに大人おとなの筋肉の隆起りゅうきがいくらかあった。それを地上に落ち付けると赭茶あかちゃ駒下駄こまげたまわりだけがくびれて血色を寄せている。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
赭茶あかちゃけた焼土しょうどと、崩れかかった壁と、どこの誰とも判らぬ屍体したいとが、到るところに見出された。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
草津大尉の声のする方に、道後どうご少尉が、懐中電灯を照しつけてみると、なるほど、今までの赭茶あかちゃけた泥土層でいどそうは無くなって、濃い水色をした、硬そうな岩層がんそうが、冷え冷えと、前途ぜんとさえぎっていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)