贔屓眼ひいきめ)” の例文
交通整理の行き届いている事は、いくら贔屓眼ひいきめに見た所が、到底東京や大阪なぞの日本の都会の及ぶ所じゃない。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
如何に贔屓眼ひいきめに見ても——いや此では田舎者扱いさるゝが当然だと、苦笑にがわらいして帰って来る始末。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
場所は色町いろまち、酒の上の口論、しかも朋輩ほうばいを討ち果したというのでは、どんな贔屓眼ひいきめに見ても弁護のみちがない。切腹の上にいえ断絶、菊地半九郎は当然その罪に落ちなければならなかった。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
けれどもいくら贔屓眼ひいきめに見ても、ナオミは恐らく二年生にも劣っているように思えました。どうも不思議だ、こんな筈はないのだがと思って、一度私はハリソン嬢を訪ねたことがありましたが
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
わたしはそれを贔屓眼ひいきめに見て、これはきっと音楽の素養によって若い女がわざと年寄りらしい声を作ったものか、あるいは菓子屋の職人が恐怖のあまりに、そんなふうに聞き誤まったのではないかと
餓鬼聖霊会がきしやうりやうゑを論ずる事」の如き、「寺僧病人問答の事」の如き、或は又「仏者と儒者渡唐天神とたうてんじんを論ずる事」の如き、論理の筆をろうしたるものは如何いか贔屓眼ひいきめに見るにせよ
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その恰好かっこう贔屓眼ひいきめに見ても、大川の水へ没するよりは、蚊帳かやへはいるのに適当していた。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)