賽日さいにち)” の例文
月の八日は薬師の賽日さいにちには相違ないが、この類の薬師はかえって八日という所から祭り始めたのではないかと思わるる仔細がある。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
軍の行動をさまたげない範囲に一劃いっかくを区ぎって、市を許可してあるらしい。そこに見られる掛小屋だの露店ほしみせの数は社寺の賽日さいにちを思わせるほど雑鬧ざっとうしている。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
賽日さいにちとみえて、そのかわりに、榎の下の赤い灯だの、花束だの、こうの煙りが、夕やみにゆらめいていた。
前に挙げた陸中化粧坂の薬師堂に美女を以て池の神のいけにえとした口碑を伝えるのも、その薬師の賽日さいにちという四月八日と関係あることは、同時に報告せられた武蔵井ノ頭の弁天の申し児なる長者の娘が
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いえ、この生業なりわいも、木賃きちんのあるじが、長谷のお賽日さいにちには人出もあるゆえと、私たち夫婦に稼ぎの道を
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この榎に願掛がんがけすれば、浮気男に夢が通じるとか、恋仇こいがたきみつかせるとかいう迷信が生まれ、袴垂が獄死した永延えいえん二年六月七日の七ノ日を賽日さいにちとして、クサ市の盗児から
賽日さいにちなどは、昼から出ている露店の呼び声や物の匂いがやたらにする。
が、賽日さいにちでもあろうか。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)