財嚢かみいれ)” の例文
下着はつむぎかと思われる鼠縞、羽織は黒の奉書にお里の知れた酸漿かたばみ三所紋みところもん、どういうはずか白足袋に穿はきかえ、机の上へ出しそろえて置いた財嚢かみいれ手巾はんけち巻烟草入まきたばこいれ
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
今度は阿父さんの財嚢かみいれから沢山たくさんなおかね、盲唖院の先生方せんせいがたの月給に差上げるお銭を持出して二つきも帰つて来ないんだもの。阿父さんは見附次第みつけしだい警察へ出すと被仰るけれど、其れでは明るみの耻に成る。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
すぐ出向うとして気が付いて見ると、小歌に与える祝儀だけの物も、もう財嚢かみいれには残って居なかった。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)