謹直きんちょく)” の例文
取締上とりしまりじょう不都合だから、蕎麦屋そばや団子屋だんごやへさえはいってはいかんと、云うくらい謹直きんちょくな人が、なぜ芸者といっしょに宿屋へとまり込んだ」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小心な人の心を迎えるには、まず小心でなければならぬ——としているものか、いつもにもない謹直きんちょくさであった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中央に校長のまばらに白い頭と謹直きんちょくな顔が見えた、その左に背の高いつるのごとくやせた漢文の先生、それととなりあって例の英語の朝井先生、磊落らいらくな数学の先生
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
いや、謹直きんちょくですから、う思ったら然う断らないと気が済まないんです。しかし世渡りには損な性分しょうぶんです。就職の面会に行っても、この調子ですから、採用されっこありません。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
まって晩酌ばんしゃくを取るというのでもなく、もとより謹直きんちょく倹約けんやくの主人であり、自分も夫に酒を飲まれるようなことはきらいなのではあるが、それでも少し飲むとにぎやかに機嫌好くなって
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「きみに相談があるんだがね」と光一は謹直きんちょくな顔をしていいだした。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
磯貝十郎左衛門は、謹直きんちょくそのもののような青年だった。同時に
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると急に恐懼きょうくして、ひとりが謹直きんちょくに答えた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)