謦咳けいがい)” の例文
知っている人は知っている、知らない人は知らない、これぞ十八文の名声天下にとどろく(?)道庵先生の謦咳けいがいの破裂であることは間違いがありません。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼らの謦咳けいがいに接せんがために、ロシアの全土からおびただしい巡礼が、千里の道を遠しともせず、群れをなしてこの町へ流れこんで来るのであった。
このとき初めて私は西田先生の謦咳けいがいに接したのである。講演はよく理解できなかったが、極めて印象の深いものであった。先生は和服で出てこられた。
西田先生のことども (新字新仮名) / 三木清(著)
「君は見ないからだよ。しかし断髪美人は副産物さ。主な目的は成功者の謦咳けいがいに接してインスピレーションを受けることにあるんだから差支あるまい」
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
私はその何分かの間、独り前朝の遺臣たる名士と相対していたのみではない。又実に支那近代の詩宗、海蔵楼詩集かいぞうろうししゅうの著者の謦咳けいがいに接していたのである。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
謦咳けいがいに接しましたそのことの方が、実は一層に珍らしくも、有難くも想われるのでござります。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
朝夕先生の謦咳けいがいに接して、厳父のごとく仰ぎ見、慈母のごとく慕っていたわれわれ八十人の同志は、にわかに先生の死に面して、愕然として為すところを知らなかったのであります。
小山内薫先生劇場葬公文 (新字新仮名) / 久保栄(著)
そして、会沢に逢ひたくてたまらず、遂に水戸の寓居を訪れて、その謦咳けいがいに接して
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
われ森先生の謦咳けいがいに接せしはこの時を以て始めとす。先生はわれをかえりみ微笑して『地獄の花』はすでに読みたりと言はれき。余文壇に出でしよりかくの如き歓喜と光栄に打たれたることなし。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
親しく謦咳けいがいに接して往時を追懐する時は容易に恵まれないのである。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その上これは、云うまでもなく郷党の先輩であり、師父のような情愛を感ずる彼らの西郷先生の片影を、とおい僻地に於いてこの人を得てその謦咳けいがいを感ずることでもある。それほど期待は大きかった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「僕さ。僕のところへは尾崎さんの唾が飛んで来た。真正ほんとう謦咳けいがいに接したのは僕さ」
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
残念ながら謦咳けいがいに接する折がなかった。
文壇昔ばなし (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)