諾否だくひ)” の例文
用事はもとより単簡たんかんであった。けれども細君の諾否だくひだけですぐ決定されべき性質のものではなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「昨日レヴェズ様が、私に公然結婚をお申し出になりました。そして、その諾否だくひを、この二つで回答してくれと仰言おっしゃって……」と彼女は語尾をすぼめて、あまりにもあわただしい
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
美奈さん、貴女あなたには、お話しなかったけれども、わたし青木さんから、一昨日の晩、突然結婚の申込を受けたのです。そうして、それに対する諾否だくひのお返事を、今晩しようとうお約束をしたのです。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
さように、追い返さるるも、御狭量ごきょうりょうにとられて、おもしろくないでしょう。諾否だくひは、もちろん御意にあること。一応、使者なるものを、おん前にお引かせなされても、よろしかろうと愚考されますが
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
アア考えてみれば御両親の諾否だくひが僕の運命のわかるる所。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
宗治の心はすでに諾否だくひの先へ超えているのであった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)