諷詠ふうえい)” の例文
そこで日本には昔からこの自然の景色を諷詠ふうえいし、自然と共にある人間を讃美さんびした文学がたくさんあるように思います。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ずっと後になって、三好達治氏が著した「諷詠ふうえい十二月」という本に、宋淵さんの、たらちねの生れぬ前きの月明り、という句が択ばれてあるのを見た。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
良基は、歌が新しい淡雅な諷詠ふうえいをなしたところに価値を感じたのであろう。まるでうらはらの重点のおき方である。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
それでこの十首より成る一群の内容は「松の葉に雨の露が玉のごとくにおいて、それがこぼれ落ちる」というだけのことを繰り返し繰り返し諷詠ふうえいしたものであって
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そして廣間の両側に居流れた家来たちと共に、夫人から出された「杜鵑ほとゝぎす」の題について諷詠ふうえいを競った。
友として交っている諸家の吟咏ぎんえい一百首を屏風に録し朝夕諷詠ふうえいして挙目会心の楽しみを得たいという。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
当時の風潮にしたがつてアララギ調で、なかでも千樫ちかし私淑ししゅくしてゐたらしいが、ちよいちよい校友会雑誌などに載るその作品は全部が全部自然諷詠ふうえいで、たえて人事にわたらなかつた。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
かえってずっと古い昔には民衆的であったかと思われる短歌が中葉から次第に宮廷人の知的遊戯の具となりあるいは僧侶そうりょ遁世哲学とんせいてつがく諷詠ふうえいするに格好な詩形を提供していたりしたのが
日本人の自然観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)