かゝ)” の例文
かしこに謙遜へりくだれる聖歌の作者きぬひきかゝげて亂れ舞ひつゝ恩惠めぐみうつはにさきだちゐたり、この時彼は王者わうじやに餘りて足らざりき 六四—六六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
一条ひとすぢ山径やまみち草深くして、昨夕ゆうべの露なほ葉上はのうへにのこり、かゝぐるもすそ湿れがちに、峡々はざま/\を越えて行けば、昔遊むかしあそびの跡歴々として尋ぬべし。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
謡の意は婦人もまた裳裾をかゝげて水をわたるに至つて其影悪むべく、田螺も呆れて蓋をするといふのである。
震は亨る (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
さらせる布の如き溝渠こうきよ、緑なるかもの如き草原の上なる薄ぎぬは、次第にかゝげ去られたり。時はまだ二月末なれど、日はやゝ暑しと覺ゆる程に照りかゞやきぬ。水牛は高草の間に群れり。