行嚢こうのう)” の例文
郵便物の連絡をつけてくれる行嚢こうのう班があったばっかりに、わずかにそれに慰められて、仕事を継続し得られたのであったが……。
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
そのそばにおなじみの白犬しろが頭を地につけて眼を閉じて眠っている。郵便集配人がズックの行嚢こうのうをかついではいって来る。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
宇治たちの大隊は盆地を横断し、盆地の南入口付近の密林中に行嚢こうのうを解き、仮小屋や鐘乳洞しょうにゅうどうに分散、もっぱらツゲガラオ飛行場に対する遊撃戦を待機していた。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
強力ごうりきに化けた軍の護衛兵は、いずれも屈強な猛者もさぞろいだ。それらがおのおの、一個ずつの重い行嚢こうのうをかついで勢揃いしたさまはいかにも物々しくまたたのもしい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ一ツたずさえてきた皮の行嚢こうのうの中に黄金の延棒が百三十本ほどつまっていたという話が伝わっている。その何本かを無造作につかみだして平戸久作に手渡したという。
「そしたらその先、一人分の行嚢こうのうは、いったい誰が、背負って歩くのか。わしは真ッ平ごめんじゃが」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おのおのが負う十一箇の行嚢こうのうは、そのどれ一つといえ、軽そうなのはない。——すべてさい大臣の誕生祝いに送られるあたい十万貫もする貴金属やら珠玉でたされている荷物なのだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)