血生臭ちなまぐさ)” の例文
これをしお胡椒こしょうし、家鴨の肉の截片を入れてちょっと煮込んで食べるのだが、鼈四郎は味見をしてみるのに血生臭ちなまぐさいことはなかった。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その粗暴な外見とは反対に、徳次はさういふ血生臭ちなまぐさいことが嫌ひだつた。そして、人並外れた敏感さを示すのであつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
三段抜き、二段抜きの大見出しは、ほとんど血生臭ちなまぐさい犯罪記事ばかりなのだが、そうして活字になったものを見ると、何かよその国の出来事の様で、一向迫って来なかった。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
血生臭ちなまぐさい事ばかりが行われたが、八方山に囲まれた木曽の谿谷たにあい三十里は、修羅しゅらちまたを懸け離れたおのずからなる別天地で、春が来れば花が咲き夏が来れば葉が茂り、きわめて長閑のどかなものであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)