蝴蝶ちょうちょう)” の例文
牡丹ぼたんたちまち驚いてひるがえれば、花弁はなびらから、はっと分れて、向うへ飛んだは蝴蝶ちょうちょうのような白い顔、襟の浅葱あさぎれたのも、空が映って美しい。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貸小袖に魂が入って立ったとも見えるし、行燈のともしおおうた裲襠かけたもとに、蝴蝶ちょうちょうが宿って、夢が徜徉さまようとも見える。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
引掛ひっかかりそうに便たよりなくひびきが切れて光景ありさまなれば、のべの蝴蝶ちょうちょうが飛びそうななまめかしさは無く、荒廃したる不夜城の壁の崩れから、菜畠になった部屋が露出むきだしで、怪しげな朧月おぼろづきめく。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)