蝋紙ろうがみ)” の例文
それは蝋紙ろうがみの黄の上に、間違って桃色が二重刷じゅうずりになったものだった。これは二色が重なって、柿色という思いもかけぬ色紙になった。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ぼくら残留組にあてられた小部屋で、ときどき教師からたのまれるガリ版刷りの試験用紙の作製に、ぼくが蝋紙ろうがみに鉄筆で字を書いているときであった。
煙突 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
楫棒かじぼうに掛けて地に置いた巳之屋みのやと書いた看板は、新しい光を立てて、蝋紙ろうがみすかす骨も一ツ一ツ綺麗きれいである。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
厚い蝋紙ろうがみに包んだ中をのぞいて見ると、まだ手をつけてない食糧がぎっしり詰っているのだった。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
赤と青と黄、それから紫に桃色に水色に緑というような強烈な色彩の蝋紙ろうがみが、あたりに散ばっていた。何のことはない、陽春ようしゅん四月頃の花壇かだんの中に坐ったような光景だった。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)