のた)” の例文
単にそればかりでなく、熱にもだえて苦しんで、さながら蛇のようにのたうちまわる。蛇神の名はそれから起ったのである。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
たちまち屍光にぼっと赤らんだ壁が作られ、それがまるで、割れた霧のように二つに隔てられてゆき、その隙間に、ノタリノタリと血がのたくってゆく影がしるされていった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それから二つの自己がまた一つになると、過ぎ去った日の事どもをだんだんにたどりながら、ベッドの上でのたうち廻っている、ただの私(半分発狂し、悪魔にかれた私)になった。
往来のまん中にも大きな蛇がのたくっていて、わたしは時々におどろかされたことを記憶している。幾度もいうようであるが、まったくこゝらは著しく変った。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その穴釣りの鰻屋も、この柳のかげに寄って来て甘酒などを飲んでいることもあった。岡持にはかなり大きい鰻が四、五本ぐらいのたくっているのを、私は見た。
御堀端三題 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その穴釣りの鰻屋も、この柳のかげに寄って来て甘酒などを飲んでいることもあった。岡持にはかなり大きい鰻が四、五本ぐらいのたくっているのを、私は見た。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
利八の話によると、番頭と小僧はきょうまで熱が下がらないで、生殺なまころしの蛇のようにのたうち廻っている。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼は今、玉藻がむいてくれたうりの露をすこしばかりすすって、死にかかった蛇のように蒲莚がまむしろの上にのた打っていた。それを慰めるのは玉藻がいつもの優しい声であった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
權六 幸ひ今日は主親しゆうおやの命日といふでも無し、殺生するにはあつらへ向きぢや。下町からのたくつて来た上り鰻、山の手奴が引つ掴んで、片つぱしから溜池ためいけの泥に埋めるからさう思へ。
番町皿屋敷 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
一匹や二匹のたくっているのならば、誰もそのままに見過ごしてしまうんですが、何分にもたくさんの蛇が一つにあつまって、盛りあがるようにとぐろをまいているんですから、よほど変っています。
半七捕物帳:34 雷獣と蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それが三日四日を過ぎると更に怪しい症状を表わして来て、病人はうつむいて両足を長くのばし、両手を腰の方へ長く垂れて、さながら魚の泳ぐような、蛇ののたくるような奇怪な形をして這いまわる。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大きい眼をひからせてのたくって来るようです。
半七捕物帳:20 向島の寮 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)