處女むすめ)” の例文
新字:処女
お秋は絶句ぜつくしてしまひました。言ひ度いことは千萬無量でも、處女むすめの舌はさう滑らかには動かず、唯シクシクと泣くばかりでした。
たゞパッチリして眼だけは、處女むすめの時其のまゝの濕みを有ツて、活々いき/\として奈何にも人を引付ける力があツた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
今度の事件はたゞ單に普通の處女むすめが老人の餌食ゑじきになるといふよりも、更に一種烈しい苦痛であるに相違ない。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
この宿の内儀さんは未だ處女むすめらしいところのある人で、爐邊ろばたで吾儕の爲に海苔を炙つた。下女は油差を見るやうなあかの道具へ湯を入れて出した。こゝの豆腐の露もウマかつた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
白百合しらゆり處女むすめで死んだ者の、さまよふたましひ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
平次はその辻斬女の頭巾を脱がせようと爭つたとき、酒の匂ひの代りに、馥郁ふくいくとして處女むすめらしい花やかなものが匂つたのです。
山家の娘でも矢張り年ごろになれば爭はれぬ處女むすめらしい色香は匂ひ出て來るものだ。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
商賣女の白粉臭いのにきると、素人しろうと娘に眼をつけて、今から七八年前から、江戸で名うての處女むすめあさり始めた
久治は飛び込んで處女むすめの弱り果てた身體を抱き上げたのです。二人は人の見る眼も忘れて濡れた頬を寄せます。
美しい月の最初の光りが、この血に染んだ處女むすめを、世にも淨らかな姿に照し出して居ります。
クリーム色の丸ぽちやで明るくて、笑顏の滅法可愛らしい——自分もまたそれを意識して、從姉いとこのお縫が死んだといふのに、柔かい微笑を斷やさないと言つた、世にも目出度い處女むすめだつたのです。