つた)” の例文
あたり總てが如何にも清潔で、たしなみのよい手古奈の平生が能く茲に現はれて居る。北側の木立に交つて柿の紅葉やつたの紅葉が猶一團の色を殘して初冬の畫幅に點精を畫いた。
古代之少女 (旧字旧仮名) / 伊藤左千夫(著)
さて寺の男に水運ばせこけを洗ひつたはがして漫漶まんかんせる墓誌なぞ読みまた写さんとすれば、衰へたる日影のはやくもうすつきてひぐらしきしきる声一際ひときわ耳につき、読難き文字更に読難きに苦しむべし。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
奢をほしいままにせば熊掌ゆうしやうの炙りものもくらふに美味よきあぢならじ、足るに任すれば鳥足てうそくの繕したるも纏ふに佳衣よききぬなり、ましてやつたのからめる窓をも捨てゞ月我をとむらひ、松たてる軒に来つては風我に戯る
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)