藁莚わらむしろ)” の例文
もとより仮屋の茶室、荒かべ藁莚わらむしろ、一壺の野の花——その程度の簡素にちがいない。要は胆養にある。また長陣にまぬためにも心がけられる。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
石燈籠いしどうろうの前には二十人ばかりの人が輪をつくっていた。そこには一枚の藁莚わらむしろせて覆うてあるものがあった。彼は人輪ひとわの間にはさまってのぞいた。
雀が森の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
水を打ったごとき式場の中央に藁莚わらむしろを敷き、その上に低い台を置き、さらにその上に踏み絵は置かれてあった。
市日では誰も朝鮮の朝鮮に会える。吾々は人込みを縫って目ぼしい品々を漁った。徳席(藁莚わらむしろ)、黄麻布、桝呑茶碗ますのみぢゃわん杞柳きりゅうの弁当箱(トンクリチャツと呼ぶ)、鉄の蝶番ちょうつがいなど。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)