薄鬚うすひげ)” の例文
『なにしろ近頃非常に沈んで居られるのは事実だ。』と尋常四年の教師は、あご薄鬚うすひげを掻上げ乍ら言ふ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
くるしいの、淋しいの、乱雲が湧き立ったのという気障きざな言葉は、見どころのある男子の口にせぬものです。とても本気では聞いて居られぬ言葉です。もう薄鬚うすひげも生えているのに、情無い。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)
翁は薄鬚うすひげはやした口元に笑を含ませ
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
『一寸待つて呉れ給へ。』と薄鬚うすひげのある尋常四年の教師が冷静な調子で言つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
競馬好きな馬博士は、「そこだ、そこだ」とばかりで、身をもだえて、左の手に持った山高帽子の上へしきり握拳にぎりこぶしの鞭をくれる。大佐は薄鬚うすひげ掻※かきむしりました。今、源は百間ばかりも進んだのでしょう。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)