とぶらひ)” の例文
想ふに杏春は生父の病を、其とぶらひを送り、故旧の援助を得て後事を営み、而る後京都を離れたことであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
夜になると、それが幻視錯覚になつて、とうとうしまひには魘夢えんむになつて身を苦しめる。死や、とぶらひや、墓の下の夢ばかり見る。たまにはいつもと違つて、生きながら埋められた夢を見る。
とぶらひの前に、お嬢様のお好な花はなんであつたかと、諸方から問合せがあつた。
薔薇 (新字旧仮名) / グスターフ・ウィード(著)
わたくしは文久壬戌七月七日に柏軒の長女洲が流行の麻疹に罹つて死んだことを記し、とぶらひを送つて帰つた塩田良三が紋服を脱ぎふるに及ばずして僵れ臥したと云つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
とぶらひの日は伝はらない。会葬者は甚だ衆く過半は医師で総髪又は剃髪であつた。みちに此行列に逢つた市人等は、「あれは御大名の御隠居のお葬だらう」と云つたさうである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そして自分の菩提所ぼだいしよとぶらひをいたして進ぜたのだと申します。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)