萱草わすれぐさ)” の例文
六九古郷ふるさとに捨てし人の消息せうそこをだにしらで、七〇萱草わすれぐさおひぬる野方のべに長々しき年月を過しけるは、七一まことなきおのが心なりける物を。
岸の叢の中には、それを着もののひもにつけると物を忘れることができるという萱草わすれぐさも生えていたが、翁はそれも摘まなかった。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
垣衣しのぶぐさ、弟は我が名を萱草わすれぐさじゃ。垣衣は浜へ往って、日に三の潮を汲め。萱草は山へ往って日に三荷の柴を刈れ。弱々しい体に免じて、荷は軽うして取らせる
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
佐渡ではまたトットバナ、信州でも伊那では鴨跖草がトテッコ花であり、またオンドリ花ともいうが、筑摩ちくま郡へ行くと萱草わすれぐさがトテッコウまたはトテコッコである。