華車きやしや)” の例文
亞麻色あまいろ薔薇ばらの花、華車きやしや撫肩なでがたにひつかけた格魯謨色クロオムいろの輕い塵除ちりよけのやうな亞麻色あまいろよりも強いと見える、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
次は、仏蘭西フランスの三色旗、空色の洋服を着た華車きやしやな将校が二人、続いて、子供を二人連れた中年の婦人。
けむり(ラヂオ物語) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
されども、おのづか見識越みしりごしならぬはあきらかなるに、何がゆゑに人目をさくるが如きかたちすならん。華車きやしやなる形成かたちづくりは、ここ等辺らあたりの人にあらず、何人なにびとにして、何が故になど、貫一はいたづら心牽こころひかれてゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
華車きやしやな飾りをほどこした椅子の上に、ひとりの美女が身を投げだし、裳裾をひいて、泣き沈んでゐた。射たれた男を介抱したあの友達であらうか。一人の男がうなだれて部屋の片隅に立つてゐた。