菅原伝授手習鑑すがわらでんじゅてならいかがみ』の三段目じゃないが、いずれを見ても山家育やまがそだち、どうにもとり立てていうほどの面相はない。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
狂言は一番目「菅原伝授手習鑑すがわらでんじゅてならいかがみ」、中幕「壺坂霊験記つぼさかれいげんき」、二番目「三日月みかづき」、大切おおぎり廓文章くるわぶんしょう」というならべ方であったが、今度は芝翫が抜けたので一座はいよいよ寂しく
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
も一人の平三は、車力しゃりきの親方の子で『菅原伝授手習鑑すがわらでんじゅてならいかがみ』の寺子屋、武部源造たけべげんぞうの弟子ならば、こいつうろんと引っとらえと、玄蕃げんばんが眼をきそうな、ひよわげで、泥亀すっぽんに似た顔をしている。
「君達はいつか我輩の語った菅原伝授手習鑑すがわらでんじゅてならいかがみ、寺子屋の段を聴いたろう?」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
中幕、「菅原伝授手習鑑すがわらでんじゅてならいかがみ」寺子屋の場、この筋はまづやめておくべし。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
菅原伝授手習鑑すがわらでんじゅてならいかがみが芸題で、染之助は斎世宮ときよのみやになっていたのです——のまぼろしが消えてしまってその代りにあの馬道で逢った蒼黒い、頬のすぼんだ小男の面影が、アリアリと頭の中に浮んだのです。
ある恋の話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)