荒蓆あらむしろ)” の例文
荒蓆あらむしろの上に、坐っている雪之丞は、しかし、じっとりと、身じろぎもせず、お初を、澄んだ目で迎えているようだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
それと向かい合った道側の雑草の上に、荒蓆あらむしろが一枚敷いてあります。その上に彼は父親と二人でしゃがみました。
土下座 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
同心の話は終り、荒蓆あらむしろの上に坐っていた五人は立って、草履をはいた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それはかわいた荒蓆あらむしろのように、彼の神経をほこりっぽく、もやもやさせた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
村中で唯一人ただひとりのチョン髷の持主、彼に対してはいつも御先生ごせんせいと挨拶する佐平爺さんは、荒蓆あらむしろの上にころり横になって、肱枕ひじまくらをしたが、風がソヨ/\吹くので直ぐい気もちに眠ってしまったと見え
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
父は荒蓆あらむしろの上にあさましい冷いからだを横たえていた。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)