花圃かほ)” の例文
その方がその当時、一葉女史を退けては花圃かほ女史と並び、薄氷うすらい女史より名高く認められていた、楠緒くすお女史とは思いもよりませんでした。
大塚楠緒子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
門をあけると、大きな鈴が、ガラン、ガランと大声を立てる仕掛けになっていて、夫人の花圃かほ女史がまず顔を出す。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
何でも金婚式についての事で、「あなたは」とお聞きになりますから、「もうすみました」と申しましたら、「やあ」と仰しゃいました。雪嶺夫人の花圃かほさんは私の学校の御出身です。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
花を、花圃かほにはしないであっちこっちへ乱れ咲くように植えたら奇麗でしょうねえ。自然な起伏だのところどころの灌木の茂みだの、そういう味の深い公園は市中には一つもありませんね。
おどろにむぐらのしげっていた、前庭の花圃かほが取払われ、秋川夫人の遺品かたみを置いてあった部屋は、翼屋の一郭ごとそっくり姿を消し、そのあとに、小径づくりの茶庭を控えた数寄屋が建っていた。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)