船底枕ふなぞこまくら)” の例文
すなわ煙草たばこ盆、枕屏風まくらびょうぶ船底枕ふなぞこまくら夜着よぎ赤い友染ゆうぜん、などといったものが現われて来るのだ、そして裸の女が立っていれば如何にも多少気がとがめる事になる
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
その女は綺麗きれいな、ちりめんの小枕こまくらに絹糸の房の垂れている、きじ塗りの船底枕ふなぞこまくらをわきによせながら、花莚はなござの上へ座ったままでいった。そばには大きな猫がいた。
彼女は産に間もない大きな腹を苦しそうに抱えて、朱塗しゅぬり船底枕ふなぞこまくらの上に乱れた頭を載せていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
刎返はねかえした重い夜具へ背をよせかけるように、そして立膝たてひざした長襦袢ながじゅばんの膝の上か、あるいはまた船底枕ふなぞこまくらの横腹に懐中鏡を立掛けて、かかる場合に用意する黄楊つげ小櫛おぐしを取って先ず二、三度
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
よほど苦しかったと見え、船底枕ふなぞこまくらを粉々に握りつぶしている。
顎十郎捕物帳:18 永代経 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)