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ふなぞこまくら
彼女は産に間もない大きな腹を苦しそうに抱えて、
朱塗の
船底枕の上に乱れた頭を載せていた。
刎返した重い夜具へ背をよせかけるように、そして
立膝した
長襦袢の膝の上か、あるいはまた
船底枕の横腹に懐中鏡を立掛けて、かかる場合に用意する
黄楊の
小櫛を取って先ず二、三度
其処には
舟底枕がひっくり返っている。其処には貸本の小説や
稽古本が投出してある。寵愛の小猫が鈴を鳴しながら
梯子段を
上って来るので、
皆が落ちていた誰かの赤いしごきを振って
戯らす。