舌舐したな)” の例文
太刀どすを抜いて小手調べに柱を斬る、覆面や黒装束にとりかかる、まるで夜討ち仕掛けの有様、血に餓えている狼の舌舐したなめずりを見るようであった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「その、女の噂をする時、舌舐したなめずりをするのだけは止せよ。大江山の洒呑童子しゆてんどうじ見たいで氣味がよくねえ」
が、僕等の祖先の書いた詩文——たとへば凡兆ぼんてうの「木の股のあでやかなりし柳かな」に対するほど、一字一音の末に到るまで舌舐したなめずりをすることは出来ないのである。
臼であり色けちであるところのおわきは、真正面からこのお方の顔を眺め、特にその偉大なるところの逞しき鼻に、きつけられたものだろう。舌舐したなめずりをしながら妙な眼をした。
長屋天一坊 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
染めたくらの髪や舌舐したなめずりしている喜惣の真赤な口などが、異様にちらつきだしたかと思うと、仔鹿の胴体も、その熱のためにむくむく膨れてきて、たまらない臭気が食道から吹きはじめると
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)