舌端ぜったん)” の例文
それまでは、私は、あまりの驚愕きょうがくに、動顛どうてんして、震えることさえ忘却し、ひたすらに逆上し、舌端ぜったん火を吐き、一種の発狂状態に在ったのかも知れない。
春の盗賊 (新字新仮名) / 太宰治(著)
まつた仏門の論師は、かく申す愚僧梅庵。安土城の大広間において、舌端ぜったん火を吐いて渡りあつたる一条は……
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
この世に生きることをやめた彼は書中の人物としてのみきていた。現実の生活ではふたたび開かれることのなくなった彼の口が、魯仲連ろちゅうれん舌端ぜったんを借りてはじめて烈々れつれつと火を噴くのである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
塵埃箱ごみばこの上に立ちあがった委員長石金さんの舌端ぜったん、まさに火を発して
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)