自棄気味やけぎみ)” の例文
だが、その自棄気味やけぎみで、陽気そうなところが、扁理の心をひきつけた。彼はその踊り子に気に入るために出来るだけ自分も陽気になろうとした。
聖家族 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そして半ば自棄気味やけぎみに、一人で飲んで騒いでやれと考えて、それでもなお念のために、懐中を一応調べてみると、七八円の金しか残っていなかった。
電車停留場 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
自棄気味やけぎみに残りのわずかな財産を投げ出して投機を試みたが、そのために万事窮してしまった。それ以来彼の性格は一変した。何事も口には出さなかった。
女は少しく自棄気味やけぎみなところもあつて、泥酔して彼の誘惑にすべりこんで来た。彼は深夜、この女を見るのに堪へられなくなつて、あづまアパートに帰つて来た。
日本三文オペラ (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
しまいには自棄気味やけぎみになって、警部が出て行くのを待ちかねてウイスキーを二三杯、立て続けに引っかけると、ヤット睡くなって来たが、ウトウトすると間もなく眼の底の空間に
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いずれにしろ、彼の挙動に、一種の自棄気味やけぎみの混っていることは事実だった。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私も東京生れで、いざとなると、無茶なところが出るのだが、それよりもこの得態の知れない男女関係の間に纏縛てんぱくされ、退くに退かれず、切放れも出来ず、もう少し自棄気味やけぎみになっていた。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
鏡子は少し自棄気味やけぎみで云つた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)