腰掛ベンチ)” の例文
「どうか有の儘にお話して下さい。小母さんはどの位永くあの腰掛ベンチにいました。そしてその男とどんな談話はなしをなさいました?」
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
彼女はその方面に、これというほど判然はっきりしたり整った何物もっていなかったからである。二人はとかくして会堂の腰掛ベンチにもらず、寺院の門もくぐらずに過ぎた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とジョンソン博士が感激を与えた積りで両手を拡げた時、私の隣りの腰掛ベンチから野崎君が立ち上った。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今迄沈むだ顔をしながらも競走ランニングの練習をして居た七郎は、運動場の隅の腰掛ベンチに腰を下した。七郎は目の前に沢田の幻を見た。と、もう一足でも走ることは厭になつてしまつた。
月下のマラソン (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
私の席のすぐ前の腰掛ベンチは、黒い色眼鏡をかけ、麦稈帽をかぶって、洋服に夏マントを着た四十格好の人によって占領されたが、その顔が非常に蒼ざめていて、いわば人相がよくなかったので
猫と村正 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
と幹事の猪股いのまた先生が招いた。私達は一番前の腰掛ベンチへ進んだ。次に
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)