編上靴あみあげぐつ)” の例文
前のめし屋のランプの影から、やがて二、三人編上靴あみあげぐつ穿いたのが出て来て、こういう時は仕事のある福音だった。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
したか忘れたけれど——白の頸卷布カラーに、半分締め殺されさうになつて、厚底の編上靴あみあげぐつをはいてり返つてる青二才の牧師補と云つたやうなのか知ら、えゝ?
足枷あしかせをおもわせる赤い豚革の編上靴あみあげぐつが、まるで彼を風に吹き飛ばされないためのおもりのようにならんでいた。
煙突 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
無人ぶにんで失礼。さあ、どうぞ、と先方さき編上靴あみあげぐつで手間が取れる。主税は気早に靴を脱いで、癇癪紛かんしゃくまぎれに、突然二階へ懸上る。段の下のひらきの蔭から、そりゃこそ旦那様。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思わず耳と眼をふさいで立ちすくんでいた私は、その音響が通過すると直ぐに又、新聞記者の本能に立帰った。編上靴あみあげぐつを宙に踊らせて、二十間ばかり向うに投げ出されている、屍体の傍へ駈けつけた。
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
編上靴あみあげぐつをシッカリとからみ付けて、勝手口から佩剣はいけんを釣り釣り出て来ると、国道とは正反対の裏山に通ずる小径こみち伝いにサッサと行きかけたので、表通りで待っていた一知青年は、慌てて追っかけて来た。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)