緑雨りょくう)” の例文
正太夫は緑雨りょくうの別号をもつ皮肉屋である。浪六はちぬの浦浪六と号して、撥鬢奴ばちびんやっこ小説で溜飲りゅういんを下げてしかも高名であった。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
斎藤緑雨りょくうもときどき飛び入りで『国会』に劇評を書いていた。こういう人たちと伍して、まだ二十歳に足らない私が最年少者であることは言うまでもない。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その頃の氏の愛読書は、三馬さんば緑雨りょくうのものが主で、その独歩どっぽとか漱石そうせき氏とかのものも読んで居た様です。
その新刊の号に斎藤緑雨りょくう君の寄せた文章が出ている。緑雨君の筆はわたしのことにも言い及んである。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
僕はこの頃緑雨りょくうの本をよんでいます。この間うちは文部省出版の明治天皇御集をよんでいました。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
わたくしが中学生の頃初め漢詩を学びその後近代の文学に志を向けかけた頃、友人井上唖々いのうえああ子が『今戸心中いまどしんじゅう』所載の『文芸倶楽部ぶんげいクラブ』と、緑雨りょくうの『油地獄』一冊とを示してしきりにその妙処を説いた。
正宗谷崎両氏の批評に答う (新字新仮名) / 永井荷風(著)
緑雨りょくうはこんな手紙を書いていますね。
わが師への書 (新字新仮名) / 小山清(著)
ある日、わたしは斎藤さいとうさんとむかいあってすわっていました。斎藤さんは号を緑雨りょくうといい、別に正直正太夫しょうじきしょうだゆうともいって、筆とり物を書く上ではわたしたちの先輩にあたりました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)