緑葉みどりは)” の例文
新しいものがふるいものに代ろうとしている。八月の日の光は窓の外に満ちて、家々の屋根と緑葉みどりはとにうつり輝いて、この東京の都を壮んに燃えるように見せた。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
緑葉みどりはの香に、心が引き寄せられているようでありながら、しかも、目には肌の氷のような、声の細い胸を射透いとおすような、女怪の住んでいる、灰色の空、赭いろのくすんだ色をして
北国の人 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
其時、私は糸立いとだてを着て、草鞋わらぢを穿いて歩いて行つた。浜島から長島までの辛い長い山路、其処には桃の花の咲いてゐるはたもあれば、椿の花の緑葉みどりはの中に紅くむらがつてゐる漁村もあつた。
春雨にぬれた旅 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
かはづが鳴き立てゝ居た。海岸の家畑には、夏蜜柑がその黄ろい大きな実を艶の好い緑葉みどりはの中に見せて居た。風の寒い伊勢志摩から比べると、かうも違ふかと思はれるほど気候が暖かであつた。
春雨にぬれた旅 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)