紙凧たこ)” の例文
小川町おがわまち紙凧たこ屋、凧八で十文で買ったからす凧。けさ早くから二番原へやってきて、夢中になって凧あげをしている。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
道はよく乾き、風のために塵埃じんあいが立っていた。家並の遠くの空に、紙凧たこが二つ三つ上っていた。そしてそれは風に揺れていた。それを見ながら彼は駅の方にあるいた。
黄色い日日 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
きっと暢気のんきに春先の空へ紙凧たこでも揚げて遊んでいるのかも知れない。お通は、腹が立ってきた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
恰幅かっぷくのよい長身に両手をだらりと垂らし、投出して行くような足取りで、一つところを何度も廻り返す。そうかと思うと、紙凧たこの糸のようにすっとのして行って、思いがけないような遠い売場にたたずむ。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)