紅葉坂もみじざか)” の例文
両側に桜並み木のずっとならんだ紅葉坂もみじざかは急勾配こうばいをなして海岸のほうに傾いている、そこを倉地の紺羅紗こんらしゃの姿が勢いよく歩いて行くのが見えた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
六時以後は直ぐに近くの紅葉坂もみじざかの自宅に帰って、家族と一緒に晩餐ばんさんる事にきめていたが、開業医の当然の責任として
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
旅館は出たがどこに行こうというあてもなかった葉子はうつむいて紅葉坂もみじざかをおりながら、さしもしないパラソルの石突きで霜解しもどけけになった土を一足ひとあし一足突きさして歩いて行った。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いつ見ても新開地じみて見える神奈川かながわを過ぎて、汽車が横浜の停車場に近づいたころには、八時を過ぎた太陽の光が、紅葉坂もみじざかの桜並み木を黄色く見せるほどに暑く照らしていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)