紅紐べにひも)” の例文
袖口だけに刺繍ぬいのある裾短すそみじかなぬい洒落者しゃれものとみえて、黒紗くろしゃ卍頭巾まんじずきんには、紅紐べにひもッたまげが紅花みたいに透いてみえる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それにしては、どこやらあかぬけし過ぎた艶姿あですがただ。旅粧たびよそおいもきりっと身についていて、裾みじかにをからげ、市女笠の紅紐べにひもが白いあごによく似合っている。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紫紺地しこんじの頭巾におもてをくるんだ弦之丞と、青い富士形の編笠に紅紐べにひもをつけて、眉深まぶかくかぶったお綱とは、せわしない往来をよけて、農人橋のうにんばし手欄てすりから川の中を見下ろしていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)