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べにひも
袖口だけに
刺繍のある
裾短かな
繍の
上わ
着、
洒落者とみえて、
黒紗の
卍頭巾には、
紅紐で
結ッた
髷が紅花みたいに透いてみえる。
それにしては、どこやら
垢ぬけし過ぎた
艶姿だ。
旅粧いもきりっと身についていて、裾みじかに
裳をからげ、市女笠の
紅紐が白い
顎によく似合っている。
紫紺地の頭巾に
面をくるんだ弦之丞と、青い富士形の編笠に
紅紐をつけて、
眉深くかぶったお綱とは、せわしない往来をよけて、
農人橋の
手欄から川の中を見下ろしていた。