紅潮こうちょう)” の例文
ながねむりから、いま、がさめたように、満面まんめん紅潮こうちょうそそいで、にっこりとしたものがあります。それは、純吉じゅんきちでした。
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
しばらくして右手の小入口から扉を押し、高城伍長がのっそりと部屋にあがって来た。顔が少し紅潮こうちょうしている。宇治の姿を見て立ち止まったが、若々しい声で
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
「本艦は、本日を以て、米国加州沿岸べいこくかしゅうえんがんに接近することができたのである」艦長の頬は生々いきいき紅潮こうちょうしていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
肺臓のあえぎに背中は大きく波打っている。しかし一度はさおになった顔色が、その時急に、反動的な紅潮こうちょうをさし、針で突けば血の吹きそうな耳朶みみたぶをしている。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、ほかの人にきこえるのをはばかるような、ひくい声でこたえ、頬を紅潮こうちょうさせた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
トシ子嬢は語り終ると、ほんのり紅潮こうちょうした顔をあげて、帆村の判定を待った。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一同の顔が、さっと紅潮こうちょうして、隆夫の顔に集まる。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)