糸繰いとくり)” の例文
室町むろまち末の人々にうたい飽かれた歌が、この尾張あたりへ伝って来て、農家の娘の糸繰いとくり歌などになまってよくうたわれている。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
成程ちいさいうちから機織はたおり糸繰いとくりばかりさせて置いて、手習などをさせんから手の書けないのは無理もないが、俗にいう貧の盗みに恋の歌とやら、妙だなア
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なし夜は終夜よもすがら糸繰いとくりなどして藥のしろより口に適ふ物等を調とゝのへ二年餘りの其間を只一日の如く看病かんびやうに手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「いんね、十七でいまの家へ一度縁づいたけれど、しゅうとさんが余り非道で、厳しゅうて、身体からだ生疵なまきずが絶えんほどでね、とても辛抱がならいで、また糸繰いとくりの方へげていた時でしたわ。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はい左様でございますかと云ってえるような人間じゃアございませんよ、田舎じゃアちいさい時から木綿着物で育て、教える事は糸繰いとくりから機織はたおりぐらいで済むけれど
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)