籠抜かごぬ)” の例文
「さあ、いらはいいらはい。ナガサキ南京なんきん手品ある。太夫さん、椿嬢ちんじょう蓮紅嬢れんこうじょうかけ合いの槍投やりなげ、火をけて籠抜かごぬけやる。看板に嘘ない」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天竜寺へ参詣と見せて籠抜かごぬけだ、それにあの坊さんに腹ん中まで見透かされて、命からがら逃げ出して来たなんぞは、近来に無え図の失敗しくじり
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
折々は黄金丸が枕辺にて、有漏覚うろおぼえの舞の手振てぶり、または綱渡り籠抜かごぬけなんど。むかとったる杵柄きねづかの、覚束おぼつかなくもかなでけるに、黄金丸も興に入りて、病苦もために忘れけり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
犯罪者が用いる籠抜かごぬけというのはこれですが、探偵も犯罪者も、時には同じ手を使うものですよ。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「とんでもない、貸家札なんかありゃ、あんな娘っ子の籠抜かごぬけを逃がしゃしません」
が——だ、ただしだ、そんな方へ体ぐるみ、籠抜かごぬけにすっぽ抜けようなんてもくろみは、ムダですからおよしなせえ、エエ、悪いこたあ言いません。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つまり彼は乗車すると見せかけて、車内を通って、反対側に飛降りてしまったのだ。自動車の籠抜かごぬけだ。明智は早くもそれを感づいて、うっかり空自動車のあとを追うを免れたのである。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)