競漕きょうそう)” の例文
岡田が洋行の事を噫気おくびにも出さぬので、僕は色々話したい事のあるのをこらえて、石原と岡田との間に交換せられる競漕きょうそうの経歴談などに耳を傾けていた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
警察ランチの運転手はしばらく競漕きょうそうして見たが、とても抜き返せないことを知ると、腹立たしげにつぶやいた。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
毎年春季に開かれる大学の競漕きょうそう会がもう一月と差し迫った時になって、文科の短艇ボート部選手に急な欠員が生じた。五番をいでいた浅沼が他の選手と衝突してめてしまったのである。
競漕 (新字新仮名) / 久米正雄(著)
○ベースボールの特色 競漕きょうそう競馬競走のごときはその方法甚だ簡単にして勝敗は遅速ちそくの二に過ぎず。故に傍観者ぼうかんしゃには興すくなし。球戯はその方法複雑にして変化多きをもって傍観者にも面白く感ぜらる。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
橋場辺の岸から向岸を見ると、帝国大学のペンキに塗られた艇庫ていこが立っていて、毎年つつみの花の咲く頃、学生の競漕きょうそうが行われて、艇庫の上のみならず、そのあたり一帯が競漕を見にくる人で賑かになる。
向島 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
もっとも当時競漕きょうそうの選手になっていた岡田は、体格でははるかに川上なんぞにまさっていたのである。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)