窮措大きゅうそだい)” の例文
互いに死生を共にし合った往年の英傑児同志が、一方は天下の頭山翁となり、一方は名もなき草叢裡そうそうり窮措大きゅうそだい翁となり果てたまま悠々久濶きゅうかつじょする。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ことに表の窮措大きゅうそだい珍野苦沙弥氏のごときものは生きてござるのが大分苦痛のように見受けらるるから、一刻も早く殺して進ぜるのが諸君の義務である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
玄機が詩を学びたいと言い出した時、両親が快く諾して、隣街の窮措大きゅうそだいを家に招いて、平仄ひょうそくや押韻の法を教えさせたのは、他日この子を揺金樹ようきんじゅにしようと云う願があったからである。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「君は依然として窮措大きゅうそだいだね、まだ世に出ることができないね」
西湖主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
太陽が無事に東から出て、無事に西へ入るのも全く実業家の御蔭である。今まではわからずやの窮措大きゅうそだいの家に養なわれて実業家の御利益ごりやくを知らなかったのは、我ながら不覚である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)