窓帷まどかけ)” の例文
築地外科病院の鉄扉てっぴは勿論しまって居た。父のと思わるゝ二階の一室に、ひいた窓帷まどかけしに樺色かばいろの光がさして居る。余は耳を澄ました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
患者も附添いもんだように黙って、離れていた。埃深い窓帷まどかけには、二時ごろの暑い日がさして来た。そこへ院長が、助手を二人つれて入って来た。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
人の性質は家内の不和といふ火力の強い炉で柔に、撓み易くせられるもので、善人になるには、世界中の高僧の説教を聴くより、女房の窓帷まどかけの下の説経を聴くに限ります。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
日光が色々に邪魔をする物のある秀麿のへやを、物見高い心から、依怙地えこじに覗こうとするように、窓帷まどかけのへりや書棚のふちを彩って、テエブルの上に幅の広い、明るい帯をなして、インクつぼを光らせたり
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)